レッド・ホット・チリ・ペッパーズとサマソニ2019
レッチリのアルバムは何を聴くべきか問題
サマーソニック2019の開催について先日概要が発表された。今年は金土日の3日間開催で、3日間のヘッドライナーはそれぞれRed Hot Chili Peppers(レッド・ホット・チリ・ペッパーズ)、B'z(ビーズ)、The Chainsmokers(ザ・チェインスモーカーズ)の3組となるそうだ。
その中で今回はレッチリについて、しかもレッチリのライブを見るにあたって聴いておくべきアルバムについて考えてみた。
最初に(そして結論)
今までレッチリの曲をほとんど聴いたことがなく、それでもサマソニ2019でレッチリのライヴを効率的に、大雑把に楽しみたい、というだけであれば2003年に発表されたベストアルバムを繰り返し聴き、Youtubeか何かで「Can't Stop」「Around the World」「Snow (Hey Oh)」「Dani California」「Dark Necessities」あたりを補完すれば事足りる。
もし仮に、2019年中に新曲または新譜が発売されたなら、その楽曲を追加で聴けばおそらくは充分だ。
この記事では特にYoutubeなどへの音源へのリンクを張っているわけではないので、効率を重視するならば今すぐにこのブログを離脱しGoogleなりYoutubeなりで動画検索でもするべきだ。
もしくはこの記事内にある画像のアルバムを上から順番に聴けばよい。
けれど、ロックを最適に聴くってなんだ?違和感があると思った方は引き続き、以下の文章を読んでいただきたい。
もうちょっとだけ無駄で無意味な文章が続く。
レッド・ホット・チリペッパーズとは
レッド・ホット・チリ・ペッパーズはアメリカ合衆国カリフォルニア州出身のオルタナティヴ/ミクスチャー・ロック・バンドとなる。ヒップ・ホップやファンクをロックンロールが吸収したバンドと捉えられがちだが、実際にはギタリストが交代するごとにファンク色は薄まり枯れた味わいのあるバンドとなっている印象が強い。
ところで、この文章の始めるにあたって私のレッチリに関する知識についてはっきりさせておきたい。
ひとことで言ってしまえば「おまえふざけんな、レッチリの聴くべきアルバムについて語る資格なんてねえだろ、このタッコングが」という言葉あたりが適当だと言える知識量ということになる。けれど、そんな少なめの知識量ではあるけれど、レッチリについて少しばかり語っていきたいと思う。
話は変わるがタッコングは「帰ってきたウルトラマン」に登場した怪獣の名称である。ご存知ない方はこれを機会に記憶の片隅にとどめいておいてほしい。
私はこのブログで何度かレッチリについて語ったことがある。けれど、どれを読み返してみても毎回ひどいこと、同じことしか書かれていない。(→参考リンク)
だいたい今までに書かれていた内容としては、xxのタイミングでレッチリは終わったと思った、レッチリの最高傑作は「レッチリの電撃ワープ」、レッチリの楽曲の中では「Love Rollercoaster」がもっとも好き、とほとんど毎回この内容しか伝えていない。
今回の文章は以前に書かれた私のレッチリに対する距離感の焼き直しでしかなく、実際には目新しいことを書くつもりも殆ど無い。
レッチリは何度もギタリストが交代しているバンドとして有名である。レッチリの歴史を語ることはつまり、その歴代ギタリストの歴史を語ることにも似ている。
逆に言えばヴォーカルのアンソニー、ベースのフリー、ドラムのチャド・スミスは1989年以降ずっと固定されている。
レッチリの歴代ギタリストの中でファンにとってもバンドにとっても最も影響力の高い存在はもちろん、ジョン・フルシアンテになる。ジョン・フルシアンテは初代のギタリストのヒレル・スロヴァクがオーバードーズにより亡くなったあと、他バンドのオーディションを経てひょんな経緯からレッチリの正式なギタリストとなる。けれど、もともとレッチリの熱烈なファンだったジョン・フルシアンテにとって、最愛のレッチリのメンバーであることとそのレッチリに才能のすべてを提供し続けることは、決して平坦な道ではなかった。
「Under The Bridge」でバンドを名実ともに唯一無比の存在に押し上げることに成功するも、全世界レベルのツアーに耐えきれず、1992年の来日の際、バンドを脱退。
レッチリは再び何人かのギタリストと組むものの、最終的には1995年、元Jane's Addiction(ジェーンズ・アディクション)のデイヴ・ナヴァロが加入をする。
この編成でレッチリはアルバム「ワン・ホット・ミニット(邦題レッチリの電撃ワープ)」を発表する。今では伝説となっている富士天神山スキー場で開催された第一回のフジロックへもこの編成で臨んでいる。このフジロックでは台風の直撃を喰らい、アンソニーは骨折中で腕にギブスをしたままパフォーマンスをしていた。強風の中あまりにも危険な状況での演奏だったため、ライヴは途中9曲目の「Give It Away」で途中終了となった。
デイヴ・ナヴァロの存在は、劇薬でしかなく、おそらくこの関係はバンドにとって長くは続かないとレッチリ・ファンは思っていたと思う。その予感はあっさり的中し、びっくりするほどあっけなく、デイヴ・ナヴァロはバンドを去った。
1999年、ジョン・フルシアンテが突如バンドに復帰した。ここで発表されたアルバムが「Californication」となる。結果としてレッチリの最大ヒットアルバムとなるが、私がこのアルバムを聴いた印象は「レッチリらしくはあるけれど枯れたバンドになった」というものだった。
さらに2002年アルバム「By the Way」が発表される。このアルバムも良アルバムと言って良いと思う。ちなみにこのアルバムに関する私の感想は「レッチリらしくはあるけれど前作カリフォルニケイションよりさらに枯れた」というものだった。
2006年さらに2枚組のアルバムが発表される。アルバム名は「Stadium Arcadium」。国内では映画デスノートの主題歌ともなっている「Dani California」が収録されていたこともあり、比較的聴かれたアルバムということになるとは思う。このアルバムに関する私の感想は「レッチリらしいかどうかもよくわからないし、ポップな存在になった」というものだ。
そして2009年、ジョン・フルシアンテは二度目の脱退をする。次のギタリストとしてはツアーメンバーとして参加していたジョシュ・クリングホッファーが加入をすることとなる。
以降レッチリのギタリストはジョシュがつとめている。
前回のフジロックでの来日について
レッチリは日本の夏フェスにこれでもかと来日している。
初回のフジロック(1997年)、2002年のフジロック、2006年のフジロック、2011年のサマーソニック、そして2016年のフジロック。
ここまで書いておいて大変、大変申し訳ないが私は、2016年のフジロックでのレッチリのパフォーマンスしか見ていない。
2011年のサマソニにおいてはUKロックファンのたしなみとして、Suede(スウェード)とPublic Image Ltd.(パブリック・イメージ・リミテッド)を見ていた。本当に申し訳ない。
それでも前回のライヴの印象について書く。
私の中ではレッチリの最大にして最高の盛り上がり曲は「Under The Bridge」なのではないか、という思いがあった。
特にフジロックはサマーソニックよりもオーディエンスの年齢層が高い。より昔の楽曲が受ける客層といって良いと思う。そんなフジロックでの「Under The Bridge」は盛り上がりに欠けていたように思う。この曲はレッチリのセットリストを見ると各ライヴ会場で必ず演奏される曲とは現在はなっていない。けれど、音楽雑誌やネット記事などのライヴレポートを見ると、要所要所のライヴでは必ず演奏され、そしてものすごく盛り上がったとだいたい書かれている。
けれどのフジロックの「Under The Bridge」は決してそんなことはなかった。もちろん誰一人合唱なんてしていなかった。私は不思議な印象を受けた。むしろ同じく古い楽曲ならば「Give It Away」の方がよほど受けていた。これには私は不思議な感覚となった。
逆に言えば90年代末から00年年代初頭に発表された2枚のアルバム「Californication」「By the Way」については、オーディエンスの反応が良かった。確かに分からないでもない。若くない私のような海外ロックファンですら、この2枚のアルバムがリアルタイムで聴いていたレッチリのアルバムとなる。正確にはデイヴ・ナヴァロ時代の「One Hot Minute」からがちょうどリアルタイムとなるけれど、このアルバムから近年のライヴで楽曲が演奏されることがないため、事実上「Californication」がフジロック開始以降、初めて聴いたレッチリのアルバムということにはなりやすい。
私にとってレッチリとは少し古めのロック・バンドで「Californication」が発表されたときにはすでに過去のバンドとなり、枯れたという印象が強かったが、どうやら、最近のレッチリはそういった受け止められ方をしていない、とこのフジロック16で私は感じ取った。
サマソニではおそらくさらに若いファンがレッチリのライブを見ることになるんだろうと思う。彼らはどのようにレッチリを捉えているんだろうか。
ジョン・フルシアンテ脱退以降のレッチリ
ジョン・フルシアンテが脱退して、ジョシュが加入して以降レッチリは2枚のアルバムを出している。
それぞれ「I'm with You」「The Getaway」。このアルバムを聴いて思ったこととしてはさらにレッチリは枯れた、というのが私の印象だ。
またジョン・フルシアンテは00年代を代表するギタリストだったとも改めて感じた。
ジョシュのギターの良し悪しというよりはジョン・フルシアンテ時代はギターが全面に押し出されたサウンド・プロダクトだったものが、以前よりはギターサウンドが後退した、という趣がある。けれど、レッチリがギターロックであることには変わらず、ジョシュの奏でるギターはレッチリのそれである、ということには変わりない。
ただし、ジョン・フルシアンテの脱退により、若いギタリストを加入させたにも関わらず、もう一度同じ言葉を繰り返すがバンドの音はさらに枯れた印象がある。
レッチリの新曲と新アルバム
ところで長々と書いてきたが、この記事の本題はまだ始まってもいない。この文章の書かれている目的はサマソニ2019でレッチリのライヴを楽しむにあたってどのアルバムを聴くべきか問題の解決にある。
それを順番に提示していきたい。
今までのレッチリの来日の際には基本的に新アルバムの発表に関わるもので、その新譜から楽曲が演奏されることが常だった。
それは今回のサマソニでの来日でも同様ではないかと私は考えている。
チャド・スミスの発言によれば、2018年中に新アルバムの制作のためレコーディングをおこなっていたが、2018年末に発生したカリフォルニア州の山火事により、このレコーディングが中断している、とのことだった。
おそらくこの夏のフェス出演とこのアルバムの発表はリンクさせる目論見だったはずだが、今後このアルバムの進行状況およびどのタイミングで発表されるのかは現在(2019年1月)のところ見当がまったくつかない。
もしこの新アルバムが今年の夏までに間に合えば、サマソニのライブのセットリストの中に大きく関わってくることは間違いない。
レッチリのベスト盤
レッチリは今までに2回ほどベストアルバムをだしているが、こちらの2枚目のベスト(グレイテスト・ヒッツ)が1枚だけ聴くレッチリのアルバムとしてはちょうどよい。
特に冒頭の2曲「Give It Away」「Under the Bridge」はセットリスト上では重要な位置を占めることが多く、M1から順番に重要な曲が並んでいるというベストアルバムとしては本当に最高な作りのアルバムだ。
逆に言えば「Aeroplane」と「Love Rollercoaster」が収録されていないとは何事なんだ!という怒りもあるけれど、その気持ちはどこか別の場所にて解消してほしい。
「Under the Bridge」はレッチリの代表曲の一つで、楽曲を聴くとわかるけれど後半部分にこれでもかっ!と盛り上がる女性コーラスが入る。これはミュージシャンでもあったジョン・フルシアンテの母親とその友人たちの声とのこと。
Californication
By The Way
2002年に発表された8thアルバム。
最初にアルバムジャケットを見た際にえらくドラッギーだなと思ったことを覚えている。アルバムの内容について原点回帰的なハードでファンクネスなものになったのかと少し期待をした。
今作は枯れた、というよりはポップになったという言い方がより近い。
ファンクネスとパンクネスがさらにレッチリから後退し、コーラスとギターの美しさは増した。
たとえばライヴで必ず盛り上がるであろう「Can't Stop」は、通常のアルバムならM1に配置するであろうが、このアルバムではM7という不思議な位置に置かれている。
M3「This Is The Place」も必聴。
「By The Way」は全16曲とアルバムそのものにかなりのボリュームがあった。
全体として美しい楽曲が増えトータルとしてのポップさ、楽曲の良さは際立つアルバムと感じたが、若干私には冗長に感じたアルバムでもある。
Stadium Arcadium
2006年に発表された9thアルバム。2枚組のアルバムで原点回帰的なファンク的な楽曲もちらほら存在する。
実のところこのアルバムは2枚組であり、全28曲ということもあり私からするとやはり冗長に感じている。ただし、このアルバムは聴きどころがある種わかりやすく、DISC1のM1から順番に聴き始めると良い。
M1「Dani California」、M2「Snow (Hey Oh)」、M5「Hump De Bump」と比較的早い部分に山場がある。また1枚目最後M14の「Hey」も是非。
ただしこのアルバムのファンクは勢い任せのそれ、というよりは大人のファンクといった趣があり、どこか枯れた印象が引き続きある。
The Getaway
ジョン・フルシアンテが脱退し、ジョシュが新ギタリストとして加入してから2枚目のアルバム。11thアルバムとなる。そして2019年1月現在最新のアルバムでもある。
2019年内に新アルバムや新曲が発表されなければ、このアルバムからそれなりの楽曲がライヴで披露されることになると思う。
ジョン・フルシアンテ脱退にともないギター色の薄まったレッチリとなる。
本作を聴いた時の正直な私の感想としては、えらく大人のレッチリになったな、と思った。ギターが小奇麗というか。ジョン・フルシアンテのメロディアスで押し出してくるギターも決して美しさがないわけではなかったけれど、都会的な音になったというのが私の感想。
印象的な曲としてはM7「Go Robot」、M2「Dark Necessities」、M5「Goodbye Angels」。
アンダー・ザ・ブリッジとセットリスト
最近のレッチリのセットリストを眺めていると、ジョン・フルシアンテ復帰後の3部作と最新アルバムそれぞれから3-4曲+「Give It Away」、気が向けば「Under The Bridge」を演奏みたいなことが多い。
サマソニでは「Under The Bridge」は演奏されるんじゃないかな、と思っている。
またハリウッドの山火事で新アルバムのレコーディングを中止せざるえない状況になったと、書いたが、2019年1月13日にカルフォルニア州のハリウッド・パラディアムでチャリティ・コンサートが開催された。このチャリティ・イベントにレッチリはBeck(ベック)やSt. Vincent(セイント・ヴィンセント)らとともに参加している。
その際のセットリスト(→link)がサマソニでの来日公演のセットリストに近いものになるのではないか、と個人的には思っている。
まとめ
最後にレッチリのサマソニでの来日に際して聴くべきアルバムは何かについてもう一回書きたい。
もうここまで来て力尽きていることもあるけれど、この記事に画像のあるアルバムを上から順番に聴いていただければそれで良いと考える。
だいたいお客さんが盛り上がる順になっている。
言ってしまうと、現在のところ最新のアルバム「The Getaway」の楽曲は、ライヴで演奏される確率が高くはあるが、皆様はあまり聴いていないはずだし、聴いていたとしても盛り上がりどころが難しい曲が多いので、何なら聴かなくても良いと思う。
そして新譜が発表された場合もっとも軽視されるであろうアルバムなことも確かだ。まずはベスト、そして7th、8th、9thアルバムを聴いていただければレッチリの全体感がつかめるはず。
以上。
追伸
せっかくなのでネット上にある、これは良いな、と思う記事を2つほど。
少しシビアな側面もあるけれど、余裕のある方は是非。