フジロック2016 3日目 目玉はレッチリだけじゃないよメモ
フジロック2016 3日目(日曜日)のメモ
フジロック私が見たいよメモ3日目です。
3日目のヘッドライナーの時間のタイムテーブルは少し特徴的で、フィールド・オブ・ヘブンのKamasi Washington(カマシ・ワシントン)以外はグリーンステージのレッド・ホット・チリ・ペッパーズとほぼ被らないようになっています。
みんなでレッチリを見てフジロック20周年をお祝いしましょうというスマッシュ日高代表からのメッセージでしょうか。
ところで1日目のメモ(→link)ではSigur Rós(シガー・ロス)とJames Blake(ジェイムス・ブレイク)が、2日目のメモ(→link)ではWilco(ウィルコ)が注目だと書きましたが3日目に特に私が注目しているアーティストはDeafheaven(デフヘヴン)です。また、この3日目は初見でも楽しめるようなアーティストが比較的多数登場するので期待しています。
Bo Ningen(ボー・ニンゲン)
ボー・ニンゲンはイギリス・ロンドンで日本人留学生4人により結成されたサイケデリック/ギター・ロック・バンド。
2016年にはいってからのボー・ニンゲンは Savages(サヴェージズ)のUK/EUツアーのサポート、Primal Scream(プライマル・スクリーム)UKツアーのサポートの計24公演と多忙だった。そしてフジロックへは2013年以来の登場となる。
彼らは、時代錯誤な長髪ロックな出で立ちをしており、棒人間という奇怪なバンド名に違わぬオドロオドロしいサウンドを奏で、不可思議で独特な日本語詞を甲高い声で叫ぶ。サイケデリック・ロックにカテゴライズされているものの、どちらかと言えば音楽としては異形。乱暴な説明ではあるけれど、初期のThe Horrors(ザ・ホラーズ)からキーボードを引っこ抜いて足りなくなった部分に70年代のロックを足したような趣き。
同じサイケデリックでもThe Beatles(ザ・ビートルズ)が手塚治虫だとするならば、ボー・ニンゲンは水木しげるだな、というのが私の感想。
Deafheaven(デフヘヴン)
デフヘヴンはアメリカ・サンフランシスコ出身のブラックメタル/ポストメタル・バンド。メタルとシューゲイザーの融合と評する人もいる。
フジロック2016日曜日の出演者の中で、私が今まで見たことのないアーティストとしては実はもっとも期待しているのがこのデフヘヴンということになる。
私は元メタラーではあるが、それは遥か遠い話でIron Maiden(アイアン・メイデン)のようなNWOBHM(ニュー・ウェイヴ・オブ・ブリティッシュ・ヘヴィメタル)から北欧メタル、ジャーマン・メタルへと時代の趨勢が切り替わっていった時代の話でしかなく、最新のメタル事情などいっさい知らない。
ブラック・メタルというジャンルについてはとことん無知でデフヘヴンと幾つかのアーティストのCDを購入しただけだ。
彼らのアルバムそのものは収録曲が少なく、その代わりに一曲一曲が長い。7-8分から曲によっては10分強のものまである。ボーカルはデス・ボイスでメタル的なギター・リフやソロも奏でられるものの、ポストロック的であり、時にシューゲイザー的でもあるが、トータルで聴くともはやプログレを聴いているかのようでもある。
デフヘヴンがブラックメタルと呼ばれる音楽ジャンルにおいて王道なのかどうかは私には判断しかねるが、ライブ映像を見た印象としてファッション的にはメタル然としていなくて、そのへんのオーソドックスなUSやUKのロック・バンドのようだ。
このあたりの「よくわからなさ」ということも含めて私は楽しみにしている。
Stereophonics(ステレオフォニックス)
ステレオフォニックスはイギリス・ウェールズ出身のオルタナティヴ・ギター・ロック・バンド。
聞き飽きたかもしれないけれがステレオフォニックスもやはりまた日英の人気格差が激しいバンドのうちの一つ。動画は昨年のT in the Park2015の映像。トリであるNoel Gallagher(ノエル・ギャラガー)のひとつ前で演奏。過去にはグラストンベリー/レディングの両フェスでヘッドライナーを務めたこともある。
シンプルで力強いギターサウンドにケリー・ジョーンズのハスキーで印象的なボーカルが乗るオーソドックスにして王道なロック・ミュージック。
前回のサマソニではマウンテンステージである意味ひっそりと演奏していたが、今回は時間が早いものの一番大きなグリーンステージでの登場となる。
The Avalanches(アヴァランチーズ)
ザ・アヴァランチーズはオーストラリア出身のエレクトロニカ・ミュージック・ユニット。メインのサウンド・プロダクト手法はサンプリング。甘美なメロディと映画のような享楽性とそして音楽のすべてをただひたすらにセンスで繋げていくさまは圧巻。
2000年に発表された00年代最大の傑作とまで言われる「Since I Left You」から16年。出る出ると毎年言われ続けていたザ・アヴァランチーズの新譜がついに今年2016年発売された。
彼らの出演発表がある種の音楽ファンには、もっとも盛り上がった瞬間でもある。
バンドそのものは現在ロビー・チャターとトニー・ディ・ブラーシの2人組となっているらしい。
ライブそのものはDJセットで実現されるようで、どのようなライブ空間となるのか非常に興味深い。
※アヴァランチーズはキャンセルとなり、浅井健一率いるシャーベッツが代打となります。シャーベッツかあ。シャーベッツねえ。
Leon Bridges(リオン・ブリッジズ)
リオン・ブリッジズはアメリカ・テキサス州出身のソウル/R&B・シンガー。今年27歳となった。
実はリオン・ブリッジズの音源を聴いて驚いた。と、いうのも今年27歳になるような若いアーティストのやるような音楽とはとても思えず、50年代60年代を彷彿させるようなクラシックな楽曲であり歌い方で、レトロ・ソウルとも呼ばれていることも妙に納得した。
Robert Glasper Experiment (ロバート・グラスパー・エクスペリメント)
ロバート・グラスパー・エクスペリメントはアメリカ・ヒューストン出身のジャズ・ピアニスト、ロバート・グラスパーを中心とするジャズ・ユニット。
現在ジャズであり、ネオ・ソウルであり、ヒップホップであり、R&Bである。
名門ブルーノート・レーベルに所属していることでも有名。
ジャズ界の風雲児でもあり、現在ジャズを語る際には外せない人物。ジャズとヒップホップとの融合とも呼ばれているが、ロックリスナー的にもNirvana(ニルヴァーナ)の「Smells Like Teen Spirit」やRadiohead(レディオヘッド)の「Everything In Its Right Place」をカバーしており、その音楽的レンジは途方も無く広い。
2番目に取り上げている動画、レディオヘッドとHerbie Hancock(ハービー・ハンコック)の力技カバーはRobert Glasper Trio(ロバート・グラスパー・トリオ)としての作品である。
ロバート・グラスパーいわくエクスペリメントとトリオは異なるグループとのことだ。違うグループだから違う音楽体験があるべきだ、というものが彼の考え方だ。トリオはアコースティックな音が主体で、エクスペリメントはそれとは異なる。電子音楽的アプローチも強く、歌も入る、とのこと。
このトリオで演奏されている「Everything In Its Right Place」はレディオヘッドで実現したかった内容にかなり近いものではないかと思えるところがある。
個人的にはレディオヘッドとハービー・ハンコックの融合というのはナイス・アイディアだと受け止めている。
Jack Garratt(ジャック・ギャラット)
ジャック・ギャラットはイギリス・バキンガムシャー出身のシンガー・ソング・ライター。その音楽ジャンルは形容しがたくソウル・ミュージック、 ダブステップ、ポップ、エレクトロニカ/ダンスと言葉にしてしまうと少しジェイムス・ブレイクを彷彿させる。
今年の2月にデビューアルバムがリリースされたばかりで、ピアノ、ギター、ドラムその他の楽器の演奏もするマルチプレイヤー。
2016年のUKの有力新人の一人で年初のBBC Sound Of 2016の一位にも選ばれている。ちなみに4位のBlossoms(ブロッサムズ)はサマソニで来日。5位のMura Masa(ムラ・マサ)はフジロック1日目のプラネット・グルーヴに登場する。
ところで動画の「Worry」という楽曲についてジャック・ギャラットはこんなことを語っている。「『Worry』はJ-POPのトラックでJustin Timberlake(ジャスティン・ティンバーレイク)が歌っているような曲さ」。
BABYMETAL(ベビーメタル)
ベビーメタルは日本出身のアイドル・メタル・ダンス・ユニット。
フジロック2016全登場アーティストのうちもっとも悩ましいアーティスト。
私はデフヘヴンのところで図らずもかつてメタラーだったことを告白しているわけだが、当時はメタラーたるもの同じロックであってもパンクだの、ギターポップだの、そんな軟弱な音楽など認めてはならんという風潮があった。ギターは速弾きするもの、ボーカルはシャウトするもの、オーディエンスはヘッドバングするもの、そして必殺のバラードでは泣くもの、それが当たり前だった。楽曲がピコピコ言おうものなら、即座に批判を受け、ヒップホップの影響を少しでも出そうものなら異教徒扱いで、弾劾裁判にかけられる勢いだった。
時代は過ぎ去り、フジロックにもベビーメタルが登場する。まさかのアイドルとメタルの融合である。いつからメタルはこんなにも懐が深くなったのか。メタル界は頑固一徹で、これはメタルだ、これはメタルじゃないという論争がつねにあった世界だ。私はその進化のまったくない世界に飽きてメタルを聴かなくなった。
実はベビーメタルを聴いて驚いたことことがある。それはメタルとアイドルの融合とかそんな甘っちょろいものじゃなく、メタルをベースにポップ・ミュージックすべてを飲み込んでいる。アイドル・ソングって元々はそういったもんだろうという言い方もあると思うけれど、ベビーメタルのそれは正直、少し度を超えているように思う。これはメタルとかダンスの範疇ではなく、ミクスチャーロックと呼んだ方が正しいと私は思っている。
Explosions In The Sky(エクスプロージョンズ・イン・ザ・スカイ)
エクスプロージョンズ・イン・ザ・スカイはアメリカ・テキサス州出身のポスト・ロック・バンド。
彼らは2012年にフジロックに登場した際にたまたま見た。その日はレディオヘッドの出演日ということもあって、フジロック史上もっとも賑わった日だったように思う。あまりの客足の多さにぐったりしながらカフェド・パリからの帰り道、ホワイト・ステージで彼らは演奏していた。
私はそれまでエクスプロージョンズ・イン・ザ・スカイの音源を一回たりとも聴いたことがなかったが、あっという間に彼らの演奏に引き込まれた。夕暮れ時のもっとも良い時間帯でバンドも夕闇につつまれつつあり、非常に幻想的に見えた。あれは本当に素晴らしい名演だった。
Years & Years(イヤーズ&イヤーズ)
イヤーズ・アンド・イヤーズはイギリス・ロンドンで結成されたエレクトロ・ユニット。
ジャック・ギャラットはBBC Sound Of 2016の1位だったが、イヤーズ・アンド・イヤーズは2015年の1位だった。
楽曲はシンセサイザーやキーボードが利用され大変キラキラしたポップ・ソングで、ボーカル(兼キーボード)のオリー・アレクサンダーがステージ上を行ったり来たりする。
楽曲が本当にポップで印象的。そのコーラスが特に耳に残る。
Red Hot Chili Peppers(レッド・ホット・チリ・ペッパーズ)
レッド・ホット・チリペッパーズはアメリカ出身のオルタナティブ・ギター・ロック・バンド。ミクスチャーロックの元祖、ギター・ファンク・ロック・バンドなどとも評される。
2009年にギターのジョン・フルシアンテが2度目の脱退をした。が、私に言わせれば、ジョン・フルシアンテなどは、そりゃいればいた方が良いが、決してそこまで重要な存在ではない。私の世代のロックファンにとってはジョン・フルシアンテは不在の時間の方が長かった。彼はレッチリを構成する重要なパーツではないのだ。
私は少し前、レッチリなんてたいしたことがないとかいうブログ記事を書いた(→link)。2016年においてレッチリはリアリティとパワーを失い、ファンも老人ばかりだとか酷いことを書いたな、すまない、あれは全部嘘だ。今現在でも、ベビーメタル以外に知名度のあるアーティストがいない日曜日の1日券を完売させ、そして新譜をパワフルにリリースするとんでもない生命力と活力にあふれたバンドだ。
思えばジョン・フルシャンテが日本公演の途中で逃走したと聞いた時、私はレッチリは終わったと思った。「One Hot Minute」でそこそこの成功を収めたかに見えた直後にデイヴ・ナヴァロがあっさり脱退した時には私はレッチリは終わったと思った。なぜかジョン・フルシアンテが復帰し「Californication」が発表された時に、あまりにも枯れたアルバムの雰囲気から私は本気でレッチリは終わったと思った。2枚組の「Stadium Arcadium 」が発表された時にはあまりにも大仰なことにレッチリは終わったと思った。その後、ジョン・フルシアンテの脱退が発表された時には、ついにレッチリは終わったと思った。
けれど、どこまでいってもレッチリは終わらなかった。
あとレッチリには「Under The Bridge」くらいしか名曲がないとも書いた。あれも嘘だ。実は2016年のフェスでは開催日によっては「Under The Bridge」はセットリストに入っておらずすべての日程で演奏されている曲ではなくなっている。けれど、あの曲がなくても「By The Way」だの「Californication」だの「Can't Stop」だのを演奏してくれれば、それでよいと思っている。個人的にはアルバム「One Hot Minute」が好きなので「Aeroplane」も演奏してくれたらな、とか考えている。
DJみそしるとMCごはん
DJみそしるとMCごはんは日本のヒップ・ホップ・アーティスト。2人組ではなく女性MCのソロ・アーティスト。
ほとんどのアーティスト/バンドがレッド・ホット・トリペッパーズの時間帯を避ける中、ほとんど唯一、ガチンコでレッチリの出演時間に登場するのがDJみそしるとMCごはん。場所はオアシスエリアの苗場食堂。
Battles(バトルス)
バトルスはアメリカ・ニューヨーク出身のポスト/エクスペリメンタル・ロック・バンド 。
グリーンステージでレッド・ホット・チリペッパーズが大円団を迎えるであろう頃にホワイトステージに登場するのがこのバトルス。
前回のフジロックでもグリーン・ステージでたくさんのオーディエンスを集め圧倒的なライブを行なうなど印象深かった。
たたみかけるようなリズムしかも変拍子で、観るものを初見であろうとなかろうと、そんなことお構いなしに踊らせる3人組。タイヨンダイ在籍時に作られた必殺チューン「Atlas」を含む1stに追いつこうかという勢いで制作され昨年にリリースされた3rdアルバムは全編インストゥルメンタル。この3rdが素晴らしい。このアルバムを引っ下げての来日で素晴らしいライブが期待される。
電気グルーヴ
グリーンステージ一番最後の登場Special Guestとなるのは電気グルーヴ。かつてはクロージング・アクトとも呼ばれた枠だ。
電気グルーヴは石野卓球とピエール瀧からなる日本のエレクトロニカ/ダンス・デュオ。
前回2014年の登場の時の様子は昨年末公開された映画「DENKI GROOVE THE MOVIE? ~石野卓球とピエール瀧」の中で少しだけ見ることが出来る。
冒頭、ライブから戻ってきたところをスマッシュの日高代表に出迎えられるシーンからこの映画は始まる。
フェスでの電気グルーヴはノンストップのダンスチューンが中心で、ほぼMCではしゃべらない事が多い。
フジロックではお約束で「富士山」を演奏することが多い。
フジロック2016 3日目のまとめ
そんなわけでなんとか3日目まで書き終わることが出来ました。
タイムテーブルで確認すると電気グルーヴのライブは深夜0:30で終了のようで彼らを見るとかなり深い時間帯となりますが、天候と体調が許す限り彼らを見たいと思っています。
3日目は一般的な目玉であるレッチリ見たさの大混雑も予想されますが、デフヘヴン、エクスプロージョンズ・イン・ザ・スカイ、バトルス、アヴァランチーズ、ボー・ニンゲンと初見でも楽しめるアーティストが勢揃いしていて、見どころ満載だと思ってます。
それでは雨具と長ぐつと替えの財布と割り箸とモバイルバッテリーとウィダーinゼリーをもって苗場へ行きたいと思います。