vs. おすすめ

おすすめブログのカウンターとして始めたはずが、気がつけば薄っぺらなブログ

Screamadelica/プライマル・スクリーム

プライマル・スクリームのアルバムを1枚だけ買うならば

 Primal Scream(プライマル・スクリーム)はアルバムごとに方向性の異なるアーティストだ。そんな彼らの最高傑作は何かと問われるならば、意見はもちろん別れることとなろうが、3rdアルバム「スクリーマデリカ」を推挙する人が多いはずだ。この記事は私がそのスクリーマデリカについて考えたことを書いた文章となる。

 

スクリーマデリカとは

 プライマル・スクリームはUK・グラスゴー出身のボビー・ギレスピーを中心とするバンド。多彩な音楽性を持ちカメレオン・バンドとも呼ばれている。アルバムごとにコンセプトや方向性などが異なるのも彼らの特徴だ。90年代の突入と同時に発表された3rdアルバム「スクリーマデリカ」は彼らのキャリアの中で最大級の成功を収めており名盤中の名盤とも評価されている。

 アルバムとしてはマンチェスター・ブーム(マッドチェスター)期に発表され、ロック・ミュージックがダンス・ミュージックを食う90年代音楽の魁(さきがけ)的な存在と位置づけられることが多い。

 実際このアルバムにはテクノ/エレクトロニカ系の協力者が多数たとえばアンドリュー・ウェザオールなどが参加し、アシッド色が強く、その後の時代に大きく影響を与えている。

 

 私はこのアルバムは90年代中頃には風化して賞味期限切れに近い感情を抱いたことがある。

 事実、90年代後半のデジタルでエレクトロニカ/ダンス・ミュージック全盛の時代に「スクリーマデリカ」を聴き直した際には、今(90年代後半)改めて聴くと古さがあって微妙と感じていた。プライマル・スクリームも5thアルバム「バニシング・ポイント」そのリミックス盤「エコー・デック」というとんでもないアルバムをリリースしていた。しかし6thアルバム「エクスターミネーター」や7thアルバム「イービル・ヒート」が発表された00年代以降に聴くと、むしろ洗練されたダンス・ミュージックと感じた。

 時代に左右されない音楽とは言い難いが、それでもこのアルバム「スクリーマデリカ」の音とそのジャケットのサイケデリックでアシッドな雰囲気は90年代を代表するUKロックの金字塔と考える。

 

スクリーマデリカ完全再現ライブ

 プライマル・スクリームは何度も来日し公演をおこなっているが、そのうちもっとも印象的だったのは、サマソニ11の前日深夜に行われたソニックマニアでのものだ。

 2011年にソニック・マニアにてプライマル・スクリームは「スクリーマデリカ」の完全再現ライヴを行った。私はもちろん幕張メッセにて見たがあまりのカッコよさに倒れそうになった。

 セットリストとしてはスクリーマデリカの収録曲「Movin' On Up」から始まり、「Slip Inside This House」、「Don't Fight It, Feel It」、「Damaged」、「I'm Comin' Down」、「Higher Than the Sun」、「Loaded」、「Come Together」で終わりその後に、「Country Girl」、「Jailbird」、「Rocks」と彼らの代表曲のうち3曲がくっついているとにかく最高なライブだった。

 「Inner Flight」と「Shine Like Stars」を演奏していないのに完全なのか?という疑問や、結局最後は彼らの最大ヒット曲「ロックス」なのか?という疑問はさておき、もう一度繰り返すが最高のライブだった。

 特に「Loaded」の演奏中に、私のそばにいた若者が叫ぶとも心から思わず漏れでたともつかない「かっこいいよ~」という死にそうな声は今でも耳に残っている。そしてこの若者の気持ちは非常に理解できるものだった。

 前の文章で90年代中頃には賞味期限切れに近い感情を抱いたと書いたが、そんなものは彼らのライブの前では嘘っぱちでしかない。

 彼らのスクリーマデリカは現役バンドの演奏であり、懐メロミュージックなどではなかった。

 

ロック好位差し

  プライマル・スクリームの音楽については「ロック好位差し」だと私は考えている。悪い意味ではなく、プライマル・スクリームは決して時代の最先端の音楽を作ったりはしない。時代の最先端から少し後ろを走っていて、タイミングが来た時にぴゅっと差し、大衆的な成功を収め、大きな評価を得る。これはポップ・ミュージックにとってもロック・ミュージックにとっても重要な存在だ。

 けれど「スクリーマデリカ」の成功により、先進的なイメージがついてしまった彼らは後々苦労を強いられることになるが、それはまた別の話ではある。

 

  日本の音楽ファンの間ではプライマル・スクリームの「スクリーマデリカ」とフリッパーズ・ギターの3rdアルバム「ヘッド博士の世界塔」との共通点を語られることが多いが、実際にアルバムの発表日としてはほぼ同時期となる。

 もちろんプライマル・スクリームの「スクリーマデリカ」はある種シングル盤を集めた編集盤的な存在でもあるため、偶然似た内容の楽曲が日英で同時多発的に発生したわけではないが、90年代初頭に一度日本の音楽と世界の音楽がシンクロしかけた瞬間があったということはどういった経緯にせよ興味深い。

 

Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...