食器用洗剤ジョイのつめかえ用に驚いたこと
時にそんなこと誰でも知ってるよ、というような事柄に驚く。世界は広い。そして深い。
その日は仕事で手間どり昼食が遅かった。遅い昼食をとりに外に出かけるため机の上を片付けているところを社内の備品担当に発見された。
「申し訳ないんですが、コンビニとか寄りますか」
「予定はないけど、別にいいよ、何?」
「ジョイの詰替え用を買ってきてほしいんです。ひとつ。ボトルになっていて白いです。200円くらいです」
「ああ、じゃあ買ってきます」
昼飯に何を食うべきか。うどんか、カレーか。それともいつもの定食か。あるいは弁当か。そんなことを考えていた私は曖昧に返事をした。
歩きながら考えた。ジョイとは台所用の、食器洗い用の洗剤らしい。何故そんなものが必要なのか。それはいい。詰替え用なのにボトルとはおかしくないか。言い間違いだろうか。私が想像したジョイの詰替え用はこの記事のトップにあるポリエチレンの袋型のやつだ。これは世間様ではボトルなどとは決して呼ばない。
ところで、どうでも良い話だが私はかつてマーケティングというものを学んだことがある。その際にテーマとして登場したことがあるのがこのジョイだ。ジョイは本国をアメリカに置くP&G社の大ヒット商品。
P&G社はマーケティングのお手本となるような施策を世界各地にて何度もとってきたグローバルな会社だ。私たちの国、日本においても激戦を勝ち抜いている。
ちなみにP&G社は略さず言うとプロクター&ギャンブル社となる。ギャンブルて。家庭用洗剤だの、洗濯機用の洗剤だの、シャンプーだの家庭の主婦主婦向けの製品を取り扱っている会社の名前にギャンブルて。円満な家庭とギャンブルという名のついた社名はあまり結びつかない。世間一般ではギャンブルといえば呑んだくれた父親が子供の給食費に手をつけるような荒れた家庭のイメージだ。資本主義国家の幸せな家庭を内部からサブリミナル効果により破壊しようとする共産圏国家の高度な罠か。いや違う。社名に創業者2人の名前が入っているだけだ。創業者の名前はプロクター氏とギャンブル氏。
P&G社のもっとも優れている部分はマーケティングとも言われているがそれは違う。P&G社の一番ひいでている部分は人材育成と組織運営。それはP&G社自身が「P&G社の物的財産すべてが失われてしまったとしても、P&G社の現在の人材が損なわれなければ、P&G社は再建出来る」と豪語するくらいだ。
そんなことを考えながら私は昼食をとった。
さて、帰り道、コンビニによった。ドラッグストアやホームセンターでもよかったが特に店名を指定されていなかったのでコンビニエンスストアにした。
ジョイのつめかえ用はボトルか。ポリエチレンの袋か。それがテーマだ。
私が発見したジョイのつめかえ用はこれ↓(右側)だった。
左側にあるのがジョイの本体。右側がつめかえ用。つめかえ用の方がでかい。
疑問を感じた。これは別につめかえ用をそのまま本体として利用すれば良いのではないだろうか。詰め替える必要性がこの商品にはあるのだろうか。
私は私なりにつめかえ用の洗剤やシャンプーというものは、そのほうがエコである、という理由により存在しているものだと思っていた。地球温暖化に対するささやかなレジスタンス行為。つめかえ用を手に取ることにより私たちは革命軍の勇者として認められるものだと思っていた。けれどこのボトルでは革命軍の一員として忠誠を尽くしたとは言えない。承認は得られない。
私は敗残兵のように打ちひしがれながらジョイのつめかえ用を買った。
あとで備品担当に聞いたところによれば、つめかえ用と通常のジョイ本体とは口の部分が違うとのこと。でも付け替えればよいですよ、とも聞いた。
つめかえ用がエコなポリエチレンの袋に入っているという幻想。それをトポトポとボトルに詰め替える作業、そしてその際に少しこぼしてしまう部分を私たちは天使の分け前( Angel's share)と呼んでいるが、それは環境に配慮しているから多少うまくいかなくても仕方よねという諦め。すべては勘違いだったのだ。