ラジエーションハウス/モリタイシ
ラジエーションハウスのドラマ化
以前、「アンサングシンデレラ 病院薬剤師葵みどり」の感想を書いた時に、モリタイシの描いている「ラジエーションハウス」が最近好きだと言った記憶がある。
実際この3月に7巻が刊行されているが、私はコミックスで(紙で)7巻まで買い揃えている。
そのラジエーションハウス7巻を買った際に帯に不思議な言葉が書かれていることに気がついた。
これが実際のラジエーションハウス7巻。
月9 TVドラマ化 4月8日スタート。
フジテレビ系列にて毎週月曜よる9時放送。
主演>五十嵐唯織役 窪田正孝、ヒロイン>甘春杏役 本田翼。
控えめに言って驚いた。
ラジエーションハウスがまさかのドラマ化。
確かにアニメ化よりはドラマ化のほうが向いているとは言え何が「まさか」なのかといえば。
1つ目。
私にとってラジエーションハウスを描いているモリタイシは昔、週刊少年サンデーで連載されていた「いでじゅう!」の作者という認識が強く、「いでじゅう!」とはつまり「ちょんまげ」がしゃべる漫画という印象が強い。
その「ちょんまげ」がしゃべる漫画を描いていた人の漫画が、月9とは。
ちなみに私の月9の認識は「東京ラブストーリー」 「101回目のプロポーズ」「ロングバケーション」あたりで止まっている。ちなみに見たことはほぼない。
おしゃれで話題性が高く若い女性受けする恋愛ドラマを放送しているドラマ枠というイメージだ。もし今やまったく違う内容であるならば私の感性は2週くらい古びているという話になる。
その若い女性向けブランド力の強いイメージの月9(ゲツク)に、元いでじゅう!のモリタイシが原作になるとは驚いた。
2つ目。
ラジエーションハウスは7巻まで進んでいるものの、現在話の冒頭(1巻)から大きく物語が進行しているわけではない。現時点でドラマ化してしまうとはひどく性急だな、と感じた。
ラジエーションハウスの主人公・五十嵐唯織役は放射線技師で、ヒロインの甘春杏は五十嵐唯織と同じ病院の放射線科医だ。
ヒロイン甘春杏は気がついていないが、五十嵐唯織と甘春杏は幼馴染であり、五十嵐唯織は医師免許を所持している。
恋愛ドラマとして組み立てるにはあまりに原作の進行が遅いし、ミステリー的な要素が強いわけではない。この作品(の進行度)で、月9でドラマをしてしまうのは若干難易度が高いのではないかな、と感じた。
逆に言えば、放射線技師(または放射線科医)の医療モノとして、色々な症例や機器について取り扱いつつ物語を進めるのであるならば、また話が違うのだろうが。
2つの懸念点については私の認識不足からくるものかもしれない。
それは私が現在の月9について全く知識がなく、現在のラジエーションハウスをそのままドラマ化しても違和感がないのかもしれない。
または原作を大きく改変して物語を構築することにより、月9らしく成り立つのかもしれない。
ラジエーションハウス(漫画)についての第一感
本音を言えばラジエーションハウス(漫画)を私は楽しく読んでいるし、ドラマ化されても見ることはないのでドラマ化の是非、賛否について語りたいわけではない。
とりあえずドラマ化の話はさておき初期のラジエーションハウス(~7巻)の魅力について書く。
もともと私がこの漫画を手にとった理由は、モリタイシの作品からという理由でしかない。実はこの漫画は原作付き(漫画原作者付き)で横幕智裕という方が原作を担当している。そのことに気がついたのは実はこの7巻が発売されてからだ。また原作とは別に放射線科医および診療放射線技師はそれぞれ監修の方がいる。
最初に表紙を見たときの第一印象としては、下着会社の営業の方が主人公の漫画かな? というものだった。
それはラジエーションハウスをランジェリーハウスと読み違えただけだろ、とか、そもそも表紙の男性は医療用スクラブ着ているんだから気がつけよ、というご意見にはごもっともとしか言いようがないけれど、けれど私にも若干の反論はある。
言い方が悪いがモリタイシの描く漫画の主人公としては、診療放射線技師よりも下着メーカーの営業の方が似合っていると思う。
ラジエーションハウスが下着メーカーの営業なり商品開発の物語ではない、と気がつくまで実は若干の時間がかかった。
実際直近のモリタイシの漫画としては「今日のあすかショー」という作品があり、この作品では何を書こうとしていたのか(もしくは書こうとしているのか)、私にはわからなかった。直接的な解釈としては女子中学生の下着(もしくはパンチラ)が書きたいように思えた。
このため、その次作品となる(正確にはこの間に「くちびるに歌を」という作品を連載している)ラジエーションハウスが下着関連の漫画であっても私の中では不思議ではなかった。
ところがある日表紙をじっくり確認すると「医療コミック新基軸 知られざる放射線科医&診療放射線技師」と描いてあるではありませんか。
私の心を引いたところは2点、今まで放射線科医の漫画なんて読んだことがなかったこと、どストレートに医療コミック新基軸と書いてあること。
新基軸ですよ、あなた。そんなド直球を投げ込まれたら打ち返すのが礼儀というもの。
知らないジャンルの漫画は即買い。
これは雨家(あめけ)家訓。
なので気がついた瞬間即買い。
ところでここまでラジエーションハウスがどんな内容か全く書いていなかったので大雑把なあらすじを書く。
ラジエーションハウスのあらすじ
主人公の五十嵐唯織(いがらし いおり)は診療放射線技師として、甘春杏(あまかすあん)の務める甘春総合病院で勤務することになる。甘春杏は前院長の娘であり、五十嵐唯織の幼馴染でもあるが、残念なことに甘春杏は五十嵐唯織のことをまったく覚えていなかった。
五十嵐唯織はどちらかというとコミュニケーションに難のあるタイプではあるけれど、診療放射線技師としては天才的な観察力、洞察力をもっていた。
けれど診療放射線技師は、医師ではないので医療行為ができない。(ネタバレ的にはなるけれど実際には五十嵐唯織は医師免許を持っている)
限られた枠内で、五十嵐唯織はどう活躍するのか、みたいな部分が当初の見どころ。
五十嵐唯織の挙動不審なさまは「おおきく振りかぶって」の三橋を思わせるところもあって、その部分も注目。
初期のモリタイシ
ところで、初期のモリタイシについてもせっかくなので何かが書きたい。
私が週刊少年サンデーを熱心に読んでいた時期が何度かあって、その2度目くらいのサンデーブームの時にモリタイシは「県立伊手高柔道部物語 いでじゅう!」通称「いでじゅう!」なる漫画を連載していた。
「いでじゅう!」かつて「帯をギュッとね!」で高校生ものの柔道漫画を成功に味をしめて、あの頃の夢よもう一度的な気分で始まったであろう、高校生部活柔道漫画だ。
私はこの「いでじゅう!」がひどく好きだった。
ちなみに「帯をギュッとね!」もとても好きだった。
けれど、「いでじゅう!」はどちらかと言えば正統的な柔道漫画である「帯をギュッとね!」と比較するならば、ひどく色物的だった。
柔道部の部員・藤原虎呂助はちょんまげだった。そしてそのちょんまげ(名称・チョメジ)がしゃべることが話しの中央にドーンとすえられていた。ある種、このチョメジが主人公であると言ってもおかしくはなかった。それはど根性ガエルのひろしとピョン吉の関係にも似ていた。
けれど、その色物的なチョメジが時に熱く、少年漫画的であり、「帯をギュッとね!」と同様の熱をもっていた。
今にして思えば、何故「いでじゅう!」はアニメ化されなかったのだろう。
こんなにもアニメ化に似合う物語はそうそうないのに、と今更ながらに思う。
漫画作品のアニメ化やドラマ化について(あるいはラジエーションハウスの最終回)
連載漫画をドラマ化なり、アニメ化することについていつも思うことがある。
それは本編(漫画)が終了していないうちに、アニメ化やドラマ化が進行してしまい、アニメやドラマの最終回がひどく中途半端なところで終わらざるえないことがたくさんあるのではないか、と思っている。
それは原作(漫画)をいっさい無視して綺麗に、アニメなりドラマなりでオリジナルの決着をつけるのであれば良いけれど、そんなことをせずに漫画でやれば明らかに打ち切りエンドみたいな無理やりな終わらせ方をすることも多いように感じている。
そもそもの構造として、ドラマ化やアニメ化した時期に無理があることが多く、どんなに頑張ってもそうでしか物語を構築できない、みたいなことは多いと思う。
原作(漫画)を売りたいという版権側の願いがあるようで、原作がきっちり終わってから映像化される幸福な作品は、私の印象では少数派と思っている。
なんの話かと言えば、そこまで連載側が進んでいないように感じているラジエーションハウスの最終回をどのように決着をつけるのか、まだ第一話すら放送されていない現段階から私は興味深く感じている。
それでは。