ファットボーイ・スリムとM-1グランプリ
はじめに
皆様はM-1グランプリでお笑い芸人が登場する時に流れる音楽、Fatboy Slim(ファットボーイ・スリム)の「Because We Can」をご存知か。いや曲そのものはテレビをちょっとでも見ていてお笑いに興味がある人ならば確実に聴いたことがある印象的なものだ。私がご存知かと尋ねているのはその曲名についてだ。
M-1グランプリ2018
いまさらの話題になるけれど、去年の暮れ「M-1グランプリ」を初めてしっかり見た。
もう忘れてしまった人がいるかもしれないので少し補足する。霜降り明星が優勝をかっさらい、和牛が惜しくも2位となり、ジャルジャルが「国わけっこ」で鉤爪を残したあの「M-1グランプリ」のことだ。さらに言えば上沼恵美子の配点に違和感を覚えた一部のお笑い芸人が放送日の夜にストロング缶をかっくらった勢いでインスタグラムでその不満を配信してしまい、物議を醸したあの「M-1グランプリ」だ。
ところで今回「M-1グランプリ」について何か書きたいと思った理由は、その審査員の配点の是非でもなければ、お笑い談義がしたいわけでもなく、松本人志と島田紳助賦が作り出した「M-1グランプリ」というフォーマットについてでもなく、純粋にファットボーイ・スリムの「Because We Can」という楽曲についてちょっと思ったことがあったからだ。
なぜ今さらM-1グランプリなのか
なぜ今さらM-1グランプリなのかと言えば、そのうち感想を書きたいと考えているけれど南海キャンディーズ・山里亮太の「天才はあきらめた」という大変不遜なタイトルの文庫本を読んだことが直接的な原因だ。
この「天才はあきらめた」の半分は山里亮太がお笑い芸人になり南海キャンディーズ結成までの経緯が書かれ、もう半分は初期の南海キャンディーズでの活動について書かれた内容となっている。
「天才はあきらめた」の中で印象的なこととしてM-1グランプリの位置づけが大変高いものとして書かれている。そしてこの本ではそこまで有名でない時代の笑い飯や、千鳥、キングコング、とろサーモンらの名前も登場する。
現在のお笑いの中心となる世代の名前が多く登場し、また同時に山里亮太がそこまで重要な位置づけと捉えているM-1グランプリについて大きく興味が湧いてきたからに他ならない。
実はYoutubeなどの動画で過去のM-1グランプリについても細切れにではあるけれど、色々なお笑い芸人の漫才を見た。
そしてその総決算としてM-1グランプリ2018を見た。
ガンガンガン、ガンガンガンガンガン
話を戻したい。
何に戻すのかと言えばファットボーイ・スリムの「Because We Can」だ。
私は過去にインターネット上でこんなやり取りを見たことがある。
A:「ほら。あれなんだっけ。お笑いタレントが出てくる時の ガンガンガン、ガンガンガンガンガンって曲」
B:「あーなんか、そんな曲あるねえ、有名な曲だよね」
それはおそらく、ファットボーイ・スリムの「Because We Can」のことだ。曲名が「Because We Can」である以上、それはガンではなくて「Can」だ。ガンガンガンガンではなくておそらくキャンキャンキャンキャンに近い発音で叫ばれているはずだ。
そんなことを思っていた。
これが本エントリを書く最初のきっかけでもある。
THE MANZAIと爆笑問題
M-1グランプリ2018が終わった1週間後くらいだろうか、フジテレビでTHE MANZAIを放送していた。私はナイツの漫才を見たくてその放送の視聴をしていた。この番組の中で、早口でまくし立てるだけでお笑いと呼ぶには若干痛々しいウーマンラッシュアワー村本を目にする僥倖を得ることができた。そしてそのTHE MANZAIのラストに登場したのが爆笑問題だった。
M-1グランプリの一週間後ということもあり、審査員への不満を出演者がSNSで動画配信してしまった件はインターネット上を駆け巡ったあとで、ネットの中ではまだまだ燃えていた。
そんな状況を爆笑問題太田が見逃すはずもなく、格好のネタとした。その際に、太田が口真似したM-1グランプリの出囃子が「ガーガーガー、ガーガーガーガーガー」。この様子を見ていて私は思った。世間的にはやはりあれは「ガーガーガー、ガーガーガーガーガー」とか「ガンガンガン、ガンガンガンガンガン」なんだなと。
実際のところどうなのかは、Youtubeをみてどう聴こえるかは皆様に判断してほしい。
ファットボーイ・スリムとは
ところでファットボーイ・スリムって誰よ?という話だけはしておきたい。
決してファットボーイ・スリムはM-1グランプリでお笑い芸人が登場する時の出囃子だけで有名な一発屋というわけではない。
ファットボーイ・スリムはノーマン・クックの1人ユニットのことで、イギリス・ブライトン出身のDJ/ダンス・エレクトロニカのアーティストとして有名であり、特に90年代後半のビッグ・ビート・ムーヴメントの中心的アーティストだ。
ノーマン・クックはかつてザ・ビューティフル・サウスの前身バンドでベースを弾いていた。90年代中盤から後半ではじけたダンス・エレクトロニカ系のアーティストの多くがそうであるように、ファットボーイ・スリムことノーマン・クックもまたロック的な出自を持つDJということになる。
日本では1stアルバム「Better Living Through Chemistry」は比較的静かな立ち上がりではあったが、Cornershop(コーナーショップ)の「Brimful Of Asha (Norman Cook Remix)」で一気に知名度を獲得すると、2ndアルバムでは「You've Come A Long Way, Baby」では時代のトップランナーとなる。
ある時期からファットボーイ・スリムは一時期の勢いは失ってしまうが、それでも夏フェスなどには何度も来日し、日本国内でもその存在感を未だに示し続けている。
「The Rockafeller Skank」や「Praise You」は名曲として時折今でも耳にするし、「
Right Here, Right Now」は一時期日産のCMにも使用されていたので記憶にある人は多いと思う。
もう一度「Because We Can」
ところでM-1グランプリでお笑い芸人の出囃子代わりに使われた「Because We Can」の歌詞について少しだけ考えたい。
基本的にこの曲の歌詞は「can」を何度も繰り返すことと、「Oh, oh」というコーラスのみにより成り立っている。
要するにあれだ。「俺は、できるできるできる」「みんな、できるできるできる」という大雑把なことを叫んでいるだけの曲だ。ちょっと自己啓発的という言いすぎかもしれないが、やけくそ気味に元気が出る曲というのが私のこの曲に対する位置付けであり、おそらくそれは皆様も変わりがないと思う。