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アンサングシンデレラ 病院薬剤師 葵みどり 1 巻/荒井ママレ

あらすじ

 本書は医療の現場においては決して陽のあたる称賛を得るわけではない薬剤師、しかも病院薬剤師にフォーカスをあてた、時には己の存在意義に悩んだりする場面をもったりもするが、それでも患者に寄り添った力強い物語である。

 

薬剤師はいらない?

 冒頭、まだ薬剤師になって年数を重ねているわけでもない主人公の葵みどりは悩む。大学で6年かけて勉強をして、国家資格を受けて資格を取って、希望していた総合病院にも就職ができた自分について。いや自分の職業について。

 もしかして薬剤師はいらないのでは、と。

 AIが進歩するれば薬剤師は不要になるのではないか、と。

一般的に薬剤師といえば勤務先としてドラッグストアや薬局を思い浮かべる人が多いと思う。私も本書を読むまではそのうちの一人だった。たとえばインターネットの求人サイトでは薬剤師という職業は引っ張りだこで、高い時給をもって募集がかけられているという印象がある。需要と供給では需要の方が勝った職業と見られている。おそらくその感覚は間違いではないとは思う。けれど現実はそこまで単純ではない。

 薬剤師のうち2割弱は病院に勤務する病院薬剤師になる。

 医療免許を持たない彼らは医療の現場では、看護師らと同様に縁の下の力持ちではあり重要な存在ではあるけれど、あくまでも医師のサポート、裏方に回らざる得ない。

 薬剤師は医療行為をおこなってはならない。なぜなら医師免許を所持していないのだから。悩みはつねにそこからやってくる。

アンサングシンデレラの意味

 この物語のタイトルは「アンサングシンデレラ 病院薬剤師 葵みどり」。アンサングとは「うたわれていない」「(英雄として)称賛されていない」などの意味となる。主人公の葵みどりは英雄でもなければ、ヒロインでもないし、アイドルでもない、病院薬剤師だ。

 もちろんこの物語の葵みどりは影のヒーローである。地味ではあるけれど、物語に活力を与え、ストーリーを力強く前進させる。

 薬剤師がいる/いらないという問いかけはもちろん愚問だ。答えは最初からわかりきっている。けれども称賛を受けたり、スポットライトが当たることは滅多にない仕事だ。

なぜ薬剤師の漫画を読むのか

 ところで何故私はこの薬剤師の物語を読もうと思ったのか、ここで記しておきたい。

 ある程度の年齢となってくると漫画や小説、いやビジネス書や新書も含めた読書をする際にファンタジー純度が物語を読むということに意味が昔よりも失われつつある。

 少しでも多く、世の中の現実に近いことを読みたいという気持ちが年を重ねるにつれて大きくなっている。

 少し違った気持ちとしてハズレを引きたくないという部分もある。例えば筒井康隆ならハズレじゃないんじゃないか。前に読んだあの漫画家ならハズレじゃないんじゃないか、とか。エルフとドワーフとオークの物語を新人の作家で読むのは個人的には、というか年齢的にはかなりきつい。ハズレであったときのショックはかなりでかい。

 けれど不思議なもので新しい出会いも欲しいとは思っている。

 その折衷案として未知の職業やスポーツの漫画や小説を読む比率が増えている。

 今回の「アンサングシンデレラ 病院薬剤師 葵みどり」はそんな流れから読み始めている。

最近読んだ他の職業やスポーツの漫画

 ここで話が大きくそれて最近読んだ他の職業やスポーツのまんがについて紹介をする。

 

 私が今もっとも興味をもっているスポーツは「筋トレ」だ。

 きっかけとしては施川ユウキの漫画「バーナード嬢曰く。」の中で、ド嬢の同級生・遠藤がダイエットについて語る際に筋トレと食事制限によるダイエットの違いを経営者と労働者に喩えた回があり、それ以降「筋トレ」というものに興味をもった。

 とはいえこの「わたしが強くしたい神」は、そこまでがっちりと筋トレについて描かれた漫画ではない。が、それゆえ、そのゆるさに興味を惹かれている。

 主人公は売れない小説家で、たまたまであったその小説家のファンの筋トレ大好き女子高生が、主人公に「あなたの書く本が売れないのは筋肉が足りないからですよ」と指摘する超展開から始まる。

 

 

 

 モリタイシ放射線技師を主人公とした物語を書いている。

 ラジエーションハウスは「アンサングシンデレラ 病院薬剤師 葵みどり」と同様に医療の現場で医療免許を持たない放射線技師を主人公としている。ただしここで若干ネタバレ的になってしまうが、主人公の五十嵐唯織(いがらしいおり)は実は放射線医で医療免許ももっている。今後物語がどんな展開をするのか分からないが、本作の主人公は天才的ではある。

 

 

 

 天皇をもって職業と言ってしまうのは若干、不敬気味ではあるけれど、昭和天皇の物語である。

 

 

 重版出来は漫画雑誌の女性編集者の物語である。この物語は過去にドラマ化もされたことがある。現在のところの最新巻12巻では主人公・黒沢心の奮闘もさることながら、前半部にはここまであまり良い印象で描かれることの少なかった安井が大きくフィーチャーされていて、後半部は新人漫画家・中田伯の葛藤が描かれている。ともにその心が大きく動く場面が印象的で、最近としては一番の注目巻だと個人的には思っている。

 

 

 最近注目のスポーツ・ボルダリングについて描かれた漫画である。ただしボルダリング熱血漫画などではなく、どちらかと言えばボルダリング部日常系漫画と言ったほうがより近い。残念ながらボルダリング初心者がボルダリングにのめり込んでいくための漫画といった趣はない。

 

総合病院の中の人間ドラマ

 本書「アンサングシンデレラ 病院薬剤師 葵みどり」は総合病院の中の一薬剤師の物語だ。病院の中で薬剤師の立場はいろいろな意味で難しい存在だ。

 医師のだした処方箋に唯一、意義がだせる存在が薬剤師だ。けれど、病院の中には現実問題として政治と力関係といったものが存在する。

 医師、研修医、看護師、助産師、薬剤師、それぞれの役割と人間関係の間で、患者にとっての最善をどれだけ尽くせるのか、ということは一般の企業の受け持つ仕事とまったく同じ構図でしかない。その中でどれだけ患者のために、自分の役割を果たせるのかということが本書のテーマになる。

 

あとがきについて

  コミックスの最後に「1巻発売に寄せて」という形で医療原案を担当された富野浩充氏からの文章が掲載されている。富野氏はこの物語の主人公・葵みどりと同様に病院薬剤師を職業としている。

 富野氏いわく、この漫画が中高生たちに流行って、中高生のなりたい職業に薬剤師が増えてくれるといいなあと編集者の方に伝えたところ、編集さんからは「残念ながらうちの読者はもっと年上でして…」と返答されたとのこと。

 将来の職業を決める際には、中高生である程度道筋をつけないといけない職業はたくさんあるけれど、6年大学で学んで国家資格をとらないと、なることのできない色異形薬剤師の道はあとがきから、読むだけでも厳しい道だと感じた。

 

 

 

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